Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0362) BOYS AND GIRLS / Bryan Ferry 【1985年リリース】

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今回取り上げるのはBryan Ferry[ブライアン・フェリー]の6thアルバム「BOYS AND GIRLS」である。


Bryan FerryROXY MUSICロキシー・ミュージック]として1982年にリリースした「AVALON」でソフィスティ・ポップの頂点を極め、ROXY MUSICを解散させた(これは2度目の解散だ)。


AVALON」は何一つ欠けた部分の無い完璧なアルバムだったが、Bryan Ferryはこの「BOYS AND GIRLS」で「AVALON」のその先に進むという快挙を成し遂げたのである。


BOYS AND GIRLS」がリリースされたのは1985年であり、当時の筆者は高校1年生だ。


ROXY MUSICも含めて筆者が初めて聴いたBryan Ferryの作品が「BOYS AND GIRLS」だった。


このアルバムは同級生の女子のお姉さん(Nちゃん)が貸してくれたアルバムであり、最初に聴いた時は良さが全く分からなかった。


Nちゃんは筆者の3つ年上で、当時は大学1年生、洋楽やファッションに詳しいとても美人な娘で、家が裕福なので大量のレコードや高級ブランドの服を持っており、会う度に新しい服を着ているような娘だった。


はっきり言ってしまうと、筆者はNちゃんに惚れていたので、Nちゃんが「最高!」と言っている「BOYS AND GIRLS」の良さが分かるようになりたくて毎日聴き続けていたところ、ある日突然、Bryan Ferryというミュージシャンの才能の凄さに気が付いたのである。


初めてBryan Ferryを聴いた時は「ヨーデルやないかいっ!」と突っ込んだほど歌の下手さと気色悪さに辟易したのだが、絶対にシンガーには向いていないその声さえも、自身が書く曲を構成する楽器の一つとして巧みに操る作曲家としてのBryan Ferryの才能に、筆者はいつの間にか魅了されていたのだ。


筆者はBryan Ferryのことを、ROXY MUSICでもソロでも、この2020年現在まで駄作を1枚も作らなかったアーティストだと思っている。


似たスタイルを持つ同時代の天才としてDavid Bowieデヴィッド・ボウイ]がいるが、David Bowieですら1980年代以降(アルバムで言うと「LET'S DANCE」以降)は精彩を欠いた。


自身より上の世代や、自身が影響を与えた下の世代からの影響さえも隠さず、果敢に新しいことに挑むDavid Bowieとは異なり、Bryan Ferryは自身のリスナーが自分に求めているものを完全に把握しており、そこから逸脱したことはけしてやらないミュージシャンなのである。


BOYS AND GIRLS」を起点として、その後の筆者はBryan FerryROXY MUSICの過去のカタログを追いかけてBryan Ferryの魅力に嵌っていくことになり、「BOYS AND GIRLS」の次作となる「BÊTE NOIRE」以降は全てリアルタイムで聴き続けた。


歌は全く上手くならないのだが、バカボンのパパではないが「これでいいのだ」である。


Bryan Ferryの声は、彼が書く曲を構成する個性的な楽器なのである。


ただし、この歌はミュージシャンBryan Ferryだからこそ許される歌い方であり、もしも、Bryan Ferryが会社の上司で、無理やりカラオケに連れていかれて、この調子で何曲も歌われたらかなりの苦痛を感じるだろう。


たぶん筆者はスリッパで頭をしばき、「ヨーデルやないかいっ!」と突っ込むはずである。