今回取り上げているROLLINS BAND[ロリンズ・バンド]の3rdアルバム「THE END OF SILENCE」は1992年のリリースなのだが、筆者はこのアルバムを聴いた頃からオルタナティヴ・メタルというジャンルを意識し始めたような気がする。
オルタナティヴ・メタルとは、その名のとおり、オルタナティヴ・ロックとヘヴィ・メタルをミックスしたジャンルである。
ロックのジャンルやサブ・ジャンルなんて、それぞれのルーツを確定したり、それぞれの境目を線引きしたりすることは不可能なのだが、オルタナティヴ・ロックの源流がパンク・ロックにあり、ヘヴィ・メタルの源流がハード・ロックにあることは、多くのロック・リスナーにとって共通の認識だろう。
筆者がロックを聴き始めた1980年代初期は、パンクとメタルには明確な対立構造があった。
筆者にロックを教えてくれた、筆者より少し上の世代の人達(1960年代初期生れ)は、基本的にパンクを受け付けない人が多く、彼等はハード・ロック、サザン・ロック、そして、初期のヘヴィ・メタルを好んでいた。
これが、筆者と同世代(1960年代後期生まれ)になると、パンクも聴くし、メタルも聴くという人が多くなったような気がする。
そして、今回取り上げているROLLINS BANDの「THE END OF SILENCE」を聴いた時に、米国産ハードコア・パンクの名門、BLACK FLAG[ブラック・フラッグ]のシンガーだったHenry Rollins[ヘンリー・ロリンズ]がやるには、かなりメタリックな音だなと思ったものだ。
そして、それと同時に、ロック・ミュージシャン側というのは、リスナー側ほどジャンルに対して、ちまちまとした拘りを持っておらず、様々な音楽から幅広く影響を受けている人が多いのかもしれないと思ったのである。
Henry Rollinsという人は、ドラッグはもちろん、酒も煙草もやらず、早寝早起きをして、筋トレを欠かさない人なので、彼の創り出す音楽には激烈でありながら清廉な印象がある。
筆者も酒・煙草をやらない(というより体質的に合わない)人間なので、Henry Rollinsには共感を覚える部分が多い。
もちろん、筆者だって不健康なイメージのロックも好きなのだが、それはポーズだけにしておくべきであり、ロック・ミュージシャンが私生活まで不健康である必要はない。
筆者にとってのHenry Rollinsとは「先生」と呼びたくなる、そんなミュージシャンなのである。