Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0340) LIANNE LA HAVAS / Lianne La Havas 【2020年リリース】

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筆者が最も好きな女性アーティストはKate Bushケイト・ブッシュ〕なのだが、Kate Bushはかなり寡作なアーティストなので、最も好きな女性アーティストではなくなりつつある。


最も好きだと思っていても、そのアーティストが長期に渡り不在だと、新しく登場してくる若くて生きの良いアーティストに興味が移ってしまうのは誰しも同じだろう。


今回取り上げている英国出身のシンガーソングライターLianne La Havas〔リアン・ラ・ハヴァス〕は、ここ数年で急激に好きになった女性アーティストであり、#0230で取り上げたCorinne Bailey Rae〔コリーヌ・ベイリー・レイ〕と並び、最も好きな女性アーティストになりつつある存在だ。


Lianne La Havasに興味を持つことになった切っ掛けは彼女の容姿が美しかったからだ。


正直に薄情するなら、筆者の場合、女性アーティストに興味を持つ切っ掛けは、いつだって先ずは容姿が自分の好みか否かなのである。


自分でも呆れるほど助平根性丸出しだと思うが、所詮男なんてその程度のものなのである。


とにもかくにもLianne La Havasの美しい容姿に惹かれた筆者であったか、彼女は容姿だけではなく、創る曲や歌うときの声も素晴らしかった。


Lianne La Havasのスモーキーな性質はSade Adu〔シャーデー・アデュ〕に似ている(Sade Aduも一時期は最も好きな女性アーティストになりかけたのだか、あまりにも寡作なため、追い続けるのがしんどくなってしまった)。


今回は今年(2020年)の7月にセルフ・タイトルでリリースされた5年ぶりの3rdアルバムを取り上げている。


Lianne La Havasの音楽性はネオ・ソウルということになると思うのだが、ジャズ、ボサノヴァ、ロック等、その影響源は幅広い。


Lianne La Havasは1989年生まれなので、今年(2020年)の誕生日を迎えても、まだ31歳であり、とても若いアーティストである。


芸術に年齢は関係ないのかもしれないが、この若さで、これだけ多種多様な曲を書け、深みのある歌を歌える才能には、もう感服させられるしかない。


惜しむらくは寡作なことである。


1960~1980年代初期のアーティストのような1年に1枚ペースは無理かもしれないが、せめて2年に1枚くらいは新作を聴かせてほしい。

 

#0339) THROWING COPPER / LIVE 【1994年リリース】

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洋楽アーティストの中には本国での高い評価に対し、日本での評価が驚くほど低いアーティストが存在する。


PEARL JAMパール・ジャム〕やSTONE TEMPLE PILOTS〔ストーン・テンプル・パイロッツ〕は、その例としてよく名前があがるアーティストだ。


しかし、今回取り上げているLIVE〔ライヴ〕はPEARL JAMやSTONE TEMPLE PILOTSとは比較にならないほど、本当に「日本での評価が驚くほど低い」アーティストなのである。


今回は彼らの出世作となった2ndアルバムの「THROWING COPPER」を取り上げているが、これは正にポスト・オルタナティヴの名盤である。


プロデュースはTALKING HEADSトーキング・ヘッズ〕のJerry Harrison〔ジェリー・ハリスン〕なのだが、これはちょっと意外な感じがする。


LIVEの音楽性はR.E.M.〔アール・イー・エム〕を引き合いに出して語られることが多いのだが、確かに初期R.E.M.のフォーク・ロック的な曲もあるのだが、LIVEの曲には綿密に構築されたヘヴィ・ロック的な曲やプログレ的な曲もあり、こういった整合感のある曲はR.E.M.とは全く異なるテイストを持つ。


PEARL JAMやSTONE TEMPLE PILOTSのリスナーを取り込めるポテンシャルがあるはずなのだが、何故か「日本での評価が驚くほど低い」のである。


筆者が考えられるその理由は二つあり、一つはメンバーのルックスが地味すぎるので外見のカッコ良いバンドを好む日本のロック・ファンには刺さりにくいということ、もう一つはLIVEというバンド名だ。


何しろ、このバンドのライヴ・アルバムは「LIVEのライヴ・アルバム」となってしまうのだからややこしい。


また、現在のインターネット社会では極めてググラビリティが低いバンド名でもある。


一応、バンド名のロゴにはIにグレイヴ・アクセントのような記号を付けてLÌVEとしているようだがこの程度では焼け石に水だろう。


筆者は数字を根拠にして音楽を聴くタイプではないのだが、改めて「THROWING COPPER」について調べてみたところ、全米で800万枚のセールを上げ、全米1位になっていることが分かり、予想を上回る大物ぶりに少々驚いている。


LIVEの出世作となったアルバムなので今回は「THROWING COPPER」を取り上げたが、LIVEのアルバムはどれを聴いてもクオリティが高く、筆者にとってはハズレが無いバンドなのである。

 

#0338) FIRST AND LAST AND ALWAYS / THE SISTERS OF MERCY 【1985年リリース】

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筆者は1969年生れなので1977年に英国でパンク・ムーヴメントが勃発した時は小学3年生だ。


従って、パンク・ムーヴメントはリアルタイムで体験できていない。


もちろん、中には小学生でロックを聴き始める人もいるのかもしれないが、それはかなり稀なケースだろう。


筆者がロックを聴き始めたのは中学1年生、つまり1982年からなので、その頃に聴いていた英国の(当時の)新人アーティストは多かれ少なかれパンクの影響を受けていた。


所謂ポストパンクやニュー・ウェイヴと呼ばていたアーティストがそれにあたるのだが、51歳になった2020年現在では、当時必死に聴いていたそれらのアーティストを殆ど聴かなくなってしまった。


その理由は簡単で、当時のポストパンクやニュー・ウェイヴのアーティストは実験精神に溢れた個性的で面白い音楽を制作していたのだが、音楽的にも演奏面でも成熟していないアーティストが多く、多種多様な音楽を聴くようになった現在では、そういった音楽を聴くのが少々しんどくなってしまったのである。


ただ、そんな中でも聴き続けているアーティストもあり、それがゴシック・ロック系のアーティストなのある。


このブログではゴシック・ロックの起源とも呼べるバンドBAUHAUS〔バウハウス〕は取り上げているので、今回はゴシック・ロックの象徴とも言えるバンドTHE SISTERS OF MERCY〔ザ・シスターズ・オブ・マーシー〕を取り上げてみる。


取り上げるのは1stアルバム「FIRST AND LAST AND ALWAYS」なのだが、実はこのアルバムはTHE SISTERS OF MERCYがリリースした3枚のスタジオ・アルバムの中では聴く回数が最も少ないアルバムだ。


むしろ、ヘヴィ・メタルちっくビルドアップされた3rdアルバム「VISION THING」の方が圧倒的に聴く回数が多い。


しかし、THE SISTERS OF MERCYの代表作を一枚選ぶとなる、どうしても「FIRST AND LAST AND ALWAYS」になってしまうのである。


やはり、このDoktor Avalanche〔ドクター・アバランシュ〕(ドラムマシン)が叩き出す無機質なリズムと暗黒感が漂う曲調こそ、ゴスの象徴たるTHE SISTERS OF MERCYの世界なのである。


ただし、Andrew Eldritch〔アンドリュー・エルドリッチ〕のヴォーカルはかなり下手糞なので、聴くのが少々しんどくなる時もある。

 

#0337) HANDLE WITH CARE / NUCLEAR ASSAULT 【1989年リリース】

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現在では大物となったスラッシュ・メタル・バンドの中には活動初期に分裂を起こし、派生バンドを誕生させたバンドが存在する。


Dave Mustaine 〔デイヴ・ムステイン〕がMETALLICAメタリカ〕在籍中に他のメンバーと揉めて、METALLICAを解雇された後に立ち上げたバンドがMEGADETHメガデス〕であることは有名な話だ。


ちなみに、この解雇の経緯はロック史上稀に見るえげつない内容である。


今回取り上げているNUCLEAR ASSAULT〔ニュークリア・アソルト〕はANTHRAXアンスラックス〕のベーシストだったDan Lilker〔ダン・リルカ〕が、シンガーのNeil Turbin〔ニール・タービン〕と揉めてANTHRAX脱退後に結成したバンドだ。


面白いのは揉めた相手のNeil Turbinも後に歌唱力の問題によりANTHRAXを解雇されていることだ。


そしてDan LilkerがNUCLEAR ASSAULTを結成する際に組んだシンガー/ギタリストのJohn Connelly〔ジョン・コネリー〕はANTHRAX初期のメンバーである。


前述のとおりDan LilkerはNeil Turbinとは揉めたが他のANTHRAXのメンバーとの確執は無かったようであり、ANTHRAXのギタリストScott Ian〔スコット・イアン〕とはSTORMTROOPERS OF DEATH〔ストームトゥルーパーズ・オブ・デス〕(S.O.D.という略称の方が有名)を結成し、一緒に活動していた。


つまり、Dan Lilker とANTHRAX は、Dave MustaineとMETALLICAのような見苦しい泥仕合に縺れ込むことは無かったのである。


NUCLEAR ASSAULTは1stアルバムのリリースが1986年なのでスラッシュ・メタル第2世代とされることもあるが(METALLICAの1stは1983年、ANTHRAXの1stは1984年)、上記のとおりバンドの中心メンバーであるDan LilkerとJohn Connellyはスラッシュ・メタルの黎明期から活動しているミュージシャンなので第2世代とはちょっと言い難いバンドだ。


今回は、そんなNUCLEAR ASSAULTの3rdアルバム「HANDLE WITH CARE」を取り上げている。


このバンドはクロスオーバー・スラッシュ(ハードコア・パンクからの影響が濃いスラッシュ・メタル)にカテゴライズされることが多いのだが、筆者の耳ではハードコア・パンクの要素はそれほど聴きとることは出来ず、初めて聴いた時からかなりメタリックな印象が強い。


所謂ドコドコドラムにザクザクギターが乗るスラッシュ・メタルなのだが、アルバム全体に漲る狂気じみたテンションが凄まじく、特にこのアルバムが放つ喧しさからは四天王を凌駕する危険な匂いが感じられるのである。

 

#0336) SUNRISE OVER SEA / THE JOHN BUTLER TRIO 【2004年リリース】

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インターネットが人々の生活の基盤を支えるインフラストラクチャーとなって久しい。


現在では、多くの人がインターネットを介して商品を購入し、商品を販売する側の企業は顧客の購入履歴や閲覧履歴を分析することにより、次に購入させるべき商品を提案する。


筆者はこれを鬱陶しいと感じることの方が多かったのだが、それでも時々凄い商品と出会えることもあるので、最近ではこれもなかなか舐めたものでもないと感じている。


今回取り上げているTHE JOHN BUTLER TRIO〔ザ・ジョン・バトラー・トリオ〕の3rdアルバム「SUNRISE OVER SEA」は上記の所謂「お客様へのお薦め」として2~3年前に出会った一枚だ。


このアルバムは2004年にリリースされたアルバムであり、このブログを書いている現在は2020年7月なので、けっこう古い作品だ。


16年も前のアルバムなのだが、どうも最近は自分の感覚が壊れてしまっているようで、2000年以降のリリースとなると、少しも古いと感じなくなってしまっている。


THE JOHN BUTLER TRIOとは、その名のとおりJohn Butler〔ジョン・バトラー〕が率いるスリー・ピース・バンドであり、音楽性はブルースがベースとなっているが、ヒップ・ホップの要素もあり、かなり雑食感の強いバンドだ。


今回取り上げている「SUNRISE OVER SEA」は2000年代型のモダン・ブルースという感じで、初めて聴いた時は、その感性の新しさと、あまりのカッコ良さにぶっ飛んでしまった。


このアルバムを自分で発見できなかったのは2000年以降の作品ということもあるのだが、実はこのバンドがオーストラリア出身であるということも大きいような気がする。


どうも筆者は「ロックは英米の音楽」という前時代的な先入観が強く、オーストラリアを含め、オセアニアや南米など、南半球には目が向かない傾向がある。


これはロックを聴き始めた1980年代初期からの傾向であり、英米以外で目が向くのはドイツか北欧くらいである。


今回取り上げているTHE JOHN BUTLER TRIO以前で、最後に好きになった南半球出身のバンドとして、今パッと思いつくのはニュージーランド出身のTHE DATSUNS〔ザ・ダットサンズ〕くらいだ。


この年齢になり、THE JOHN BUTLER TRIOのような良質なアーティストに出会えて感じたのは、やはり、人間は長生きするべきだなということである。