Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0379) THE END OF SILENCE / ROLLINS BAND 【1992年リリース】

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今回取り上げているROLLINS BAND[ロリンズ・バンド]の3rdアルバム「THE END OF SILENCE」は1992年のリリースなのだが、筆者はこのアルバムを聴いた頃からオルタナティヴ・メタルというジャンルを意識し始めたような気がする。


オルタナティヴ・メタルとは、その名のとおり、オルタナティヴ・ロックヘヴィ・メタルをミックスしたジャンルである。


ロックのジャンルやサブ・ジャンルなんて、それぞれのルーツを確定したり、それぞれの境目を線引きしたりすることは不可能なのだが、オルタナティヴ・ロックの源流がパンク・ロックにあり、ヘヴィ・メタルの源流がハード・ロックにあることは、多くのロック・リスナーにとって共通の認識だろう。


筆者がロックを聴き始めた1980年代初期は、パンクとメタルには明確な対立構造があった。


筆者にロックを教えてくれた、筆者より少し上の世代の人達(1960年代初期生れ)は、基本的にパンクを受け付けない人が多く、彼等はハード・ロック、サザン・ロック、そして、初期のヘヴィ・メタルを好んでいた。


これが、筆者と同世代(1960年代後期生まれ)になると、パンクも聴くし、メタルも聴くという人が多くなったような気がする。


そして、今回取り上げているROLLINS BANDの「THE END OF SILENCE」を聴いた時に、米国産ハードコア・パンクの名門、BLACK FLAGブラック・フラッグ]のシンガーだったHenry Rollins[ヘンリー・ロリンズ]がやるには、かなりメタリックな音だなと思ったものだ。


そして、それと同時に、ロック・ミュージシャン側というのは、リスナー側ほどジャンルに対して、ちまちまとした拘りを持っておらず、様々な音楽から幅広く影響を受けている人が多いのかもしれないと思ったのである。


Henry Rollinsという人は、ドラッグはもちろん、酒も煙草もやらず、早寝早起きをして、筋トレを欠かさない人なので、彼の創り出す音楽には激烈でありながら清廉な印象がある。


筆者も酒・煙草をやらない(というより体質的に合わない)人間なので、Henry Rollinsには共感を覚える部分が多い。


もちろん、筆者だって不健康なイメージのロックも好きなのだが、それはポーズだけにしておくべきであり、ロック・ミュージシャンが私生活まで不健康である必要はない。


筆者にとってのHenry Rollinsとは「先生」と呼びたくなる、そんなミュージシャンなのである。

 

#0378) THE AGE OF CONSENT / BRONSKI BEAT 【1984年リリース】

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#0368で取り上げたFRANKIE GOES TO HOLLYWOODフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド]は、1983の後半にデビューし、翌年の1984年にかけて、英国でセンセーショナルなヒットを連発していたが、今回取り上げているBRONSKI BEAT[ブロンスキ・ビート]も1984年にデビューし、FRANKIE GOES TO HOLLYWOOD(以下FGTH)のような派手さはなかったが、かなりのヒットを飛ばしていた。


今回、この記事を書くための下調べて分かったのだが、FGTHBRONSKI BEATは共に1984年の10月に1stアルバムをリリースしている。


BRONSKI BEAT は、Jimmy Somerville[ジミー・ソマーヴィル](vocals)、Steve Bronski[スティーヴ・ブロンスキ](keyboards)、Larry Steinbachek[ラリー・スタインバチェック](keyboards)の3人によるシンセポップ・グループなのだが、3人ともゲイであることを公表していた。


FGTHのHolly Johnson[ホリー・ジョンソン](lead vocals)とPaul Rutherford[ポール・ラザフォード](backing vocals)もゲイであることを公表していいたので、これら二つのグループにゲイのメンバーがいることを殊更強調するような音楽雑誌の記事もあったのだが、当時の筆者は「こんな音楽性と全く関係のないつまらんことが記事のネタになるんやなぁ~」と不思議に思ったものである。


筆者はそのアーティストの音楽性にしか興味が無い故に、メンバーがゲイであろうが、ヘテロであろうが、そんなことは全く重要な情報ではなかったので、今回取り上げているBRONSKI BEATの1stアルバム「THE AGE OF CONSENT」も、ただただ優れたシンセポップの名盤として楽しんで聴いていた。


やはり、このアルバムの聴きどころは、メランコリックで美しい楽曲はもちろんなのだが、Jimmy Somervilleの突き抜けるようなハイトーン・ヴォイスに尽きるのではないだろうか。


THE ASSOCIATES[ジ・アソシエイツ]のBilly Mackenzie[ビリー・マッケンジー]やERASURE[イレイジャー]のAndy Bell[アンディ・ベル]等、シンセポップ・グループのシンガーにはハイトーン・ヴォイスの名手が多いような気がするが、Jimmy Somervilleもまたその一人なのである。


こんなシンセポップの名盤をデビュー・アルバムとしてリリースしていたにも関わらず、Jimmy Somervilleはこの1枚限りでBRONSKI BEATを脱退しており、その後はシンセポップ・デュオのTHE COMMUNARDS[ザ・コミュナーズ]を経て、ソロ・シンガーとして、それなりの成功を得る。


この経緯の真相は不明だが、筆者の中でのJimmy Somervilleは、BRONSKI BEATを踏み台にした、強かな男というイメージがある。

 

#0377) THUNDER IN THE EAST / LOUDNESS 【1985年リリース】

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#0367VOW WOW[ヴァウワウ]を取り上げた時に、「1980年代当時、海外で活動しながら、一定以上の評価を得ていた日本のロック・バンドと言えば、LOUDNESSラウドネス]と、VOW WOWの二組だけだったのではないだろうか」と書いた。


このブログを書いている2020年現在では、海外で活躍している日本のロック・バンドも少なからず存在する。


しかし、SNSはもちろんのこと、一般市民が簡単に利用できるインターネットすら無かった当時、日本のロック・バンドが世界を相手に戦いを挑むというのは正気の沙汰では無かったのである。


そもそも、日本のロック・バンドなど世界から全く相手にされていない時代、否、もしかすると日本にロック・バンドが存在することすら知られていなかった時代に、VOW WOWとLOUDNESSは世界から一定以上の評価を得ていたのだ。


この二つのバンドの功績の大きさは、今のように、気軽に楽曲や演奏を動画配信サイトにアップロードし、簡単に世界の人から見てもらえるチャンスのある現在の尺度では計り知れないものがあると言えるだろう。


今回取り上げているLOUDNESSの5thアルバム「THUNDER IN THE EAST」は、アトランティック・レコードとの契約を得た彼らが、明確に世界進出を意図して制作したアルバムであり、筆者が初めて聴いたLOUDNESSのアルバムである。


このアルバムがリリースされた1985年の筆者は高1だったのだが、とにかく、このアルバムには度肝を抜かれた記憶がある。


このアルバムを聴く前にも、日本のロック・バンドのアルバムを聴いたことはあったのだが、大抵の場合、当時の日本のロック・バンドには歌謡曲っぽい歌メロが付きものだった。


これについては、まだロック・シーンが確立されていなかった当時の日本では、ロック・バンドも歌謡曲のリスナー層も巻き込まなければならなかったという事情もあると思うのだが、日本人がロックをやろうとする時にどうしても出てしまう隠しきれない個性でもあると筆者は思っていたのである。


しかし、LOUDNESSの曲には歌謡曲っぽさは微塵もなく、英米ヘヴィ・メタル・バンドと比べても全く遜色が無いことに当時の筆者は度肝を抜かれたのだ。


度々ダサいと言われる旭日旗のようなアルバム・カヴァーにしても、日本のロック・バンドが世界に戦い挑むには、これ以上無いくらいにピッタリのデザインなのである。

 

#0376) NO BRAKES / John Waite 【1984年リリース】

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#0366でRick Springfield[リック・スプリングフィールド]の「BEAUTIFUL FEELINGS」を取り上げた時に「このアルバムはロックを聴き始めた人が聴くのにちょうど良い」と書いた。


「BEAUTIFUL FEELINGS」に限らず1980年代にリリースされたRick Springfieldのアルバムは、どれもキャッチーで、メロディアスで、いかにもロックらしいロックなので、とにかくロックを聴き始めた人の入り口としてちょうど良いのである。


例えば、ロックを聴き始めたばかりの人に、ポストパンク、エクスペリメンタル・ロック、デス・メタル、インダストリアル・メタル等、癖の強いジャンルを聴かせたら、その人がよほどの変わり者でない限り、殆どの人はロックを嫌いになってしまう可能性が高い。


ロックを聴き始めた頃は、変に癖の強いものを聴くよりも、メインストリームのロックらしいロックを聴き、そこから徐々にロックの多様性を学び、癖のあるものも気に入ればオルタナティヴな方へ進めば良いし、気に入らなければメインストリームを突き進めば良い。


今回取り上げているJohn Waite[ジョン・ウェイト]の2ndアルバム「NO BRAKES」もロックを聴き始めた人が聴くのにちょうど良いアルバムだ。


筆者もロックを聴き始めた中学生の頃(1980年代)、このアルバムを毎日のように聴いていた。


チャートの順位なんて筆者にとっては特に大切な付加価値ではないのだが、このアルバムには全米1位になった永遠の名曲"Missing You"が収録されているのも良い。


失った愛への未練を歌う、この切ないミドルテンポの曲をテレビの洋楽番組で初めて聴いた時、体に電流が走り抜けたような感覚があったことを、今でもはっきりと憶えている。


筆者はこのアルバムを起点として、彼が所属していたTHE BABYS[ザ・ベイビーズ]を知り、1980年代後半には、そのTHE BABYSを再構築したようなBAD ENGLISH[バッド・イングリッシュ]の登場に胸を躍らせたものである。


そう言えば、BAD ENGLISHにも"When I See You Smile"という永遠の名バラードがあり、この曲もロックを聴き始めた人が聴くのにちょうど良い曲だ。


John Waiteというシンガーは、派手さはないのだが、とても歌の上手いシンガーであり、歌い方に変な癖が無いところも良いし、ちょっと湿り気を帯びた声に、筆者はこの人が持つ英国人らしさを感じている。


どんな曲でも歌える人だが、ミドルテンポやバラードには特にフィットする声なのである。

 

#0375) AMERICA'S VOLUME DEALER / CORROSION OF CONFORMITY 【2000年リリース】

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12月に入ってからはヒップ・ポップとクラウトロックを聴き続けていたのだが、今週からはサザン・ロック、というよりは、サザン・メタルを聴くことが多くなった。


今回取り上げているCORROSION OF CONFORMITY[コロージョン・オブ・コンフォーミティ]はハードコア・パンクからキャリアをスタートさせ、ストーナー・メタル、スラッジ・メタル、サザン・メタルに音楽性を広げていったバンドだ。


筆者と同じ世代(2020年現在でアラフィフ)の人でCORROSION OF CONFORMITY(以下、COC)を聴いている人の多くは、METALLICAメタリカ]経由でこのバンドを知った人が多いのではないだろうか。


筆者も正にそれであり、METALLICAのインタビューでCOCを知り、COCのアルバムを買うに至った。


筆者の場合、METALLICA経由で知ったバンドを、METALLICAよりも気に入ってしまう場合が多い。


DIAMOND HEAD[ダイアモンド・ヘッド]然り、VENOM[ヴェノム]然り、そして、COC然りである。


そもそも、筆者が心底好きなMETALLICAのアルバムは1st「KILL 'EM ALL」、2nd「RIDE THE LIGHTNING」、3rd「MASTER OF PUPPETS」までであり、4th「...AND JUSTICE FOR ALL」以降は、ついぞ嵌れない状態が続いており、スラッシュ・メタル四天王ではMETALLICAよりもMEGADETHメガデス]、SLAYER[スレイヤー]、ANTHRAXアンスラックス]の方が圧倒的に好きだ。


さて、今回取り上げているのはMETALLICA経由で知って、METALLICAよりも気に入ってしまったCOCの6thアルバム「AMERICA'S VOLUME DEALER」だ。


COCらしさが全開になった傑作という意味では、もしかすとる前作「WISEBLOOD」の方がファンからの人気は高いのかもしれない。


この「AMERICA'S VOLUME DEALER」ではストーナー・メタルやスラッジ・メタルの成分が薄まり、サザン・メタルの成分が濃くなっている。


曲によっては、サザン・メタルというよりも、1970年代のサザン・ロックに聴こえる曲もある。


前作までと比較すると歌メロが強調されており、これまでにない格段にキャッチーな内容のアルバムに仕上がっている。


最も聴き易いCOCのアルバムとも言えるだろう。


COCは、3rd「BLIND」以降、1st「EYE FOR AN EYE」や2nd「ANIMOSITY」で聴けたハードコア・パンクの成分を薄めていくのだが、この6th「AMERICA'S VOLUME DEALER」を聴いていると、初期のハードコア・パンク時代のCOCとは別のバンドと考えた方がいいのかもしれないと思えてくるのである。