Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0399) WHITE PONY / DEFTONES 【2000年リリース】

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2001年から始まった21世紀も今年で10年になる。


既に20世紀は「今は昔」となった。


最近、自分の中で20世紀の記憶が薄れていくのを感じて仕方がない。


しかし、過去を忘れるということは、それだけ今が充実していると思うようにしている。


今回取り上げているのは20世紀最後の年である2000年にリリースされたDEFTONESの3rdアルバム「WHITE PONY」だ。


DEFTONESオルタナティヴ・メタルにカテゴライズされるバンドである。


これまでに色々なオルタナティヴ・メタル・バンドを好きになり、あれやこれやと聴いてきたのだが、DEFTONESに関しては初めて聴いた時から他のオルタナティヴ・メタル・バンドとは決定的な違いを感じてきた。


このバンドは爆音で演奏している時でも喧しさを感じない。


喧しいというよりは暗いのである。


「それは、お前の耳と頭どうかしてるからだよ」と言われるかもしれないが、こればかりはそう聴こえるのだから仕方がない。


英語が苦手なので歌詞についてはよく分からないのだが、怒りを感じさせる単語がちょいちょい出てくるように思える。


シンガーのChino Moreno[チノ・モレノ]はメキシコ系米国人なのだが、米国ではメキシコ系の人も、アフリカ系の人と同じように差別を受けたりしているのだろうか。


Chino Morenoが影響を受けたシンガーとして名を挙げる人の中でFAITH NO MORE[フェイス・ノー・モア]のMike Pattonマイク・パットン]、BAD BRAINS[バッド・ブレインズ]のH.R.[エイチアール]は「なるほど」と思うのだが、同時にPrince[プリンス]、THE SMITHSザ・スミス]のMorrisseyモリッシー]の名も挙げており、こちらは「えっ」という感じである。


しかし、PrinceやMorrisseyのような、DEFTONESの音楽性とは直接繋がらない人達からの影響がDEFTONESの曲に特異性をもたらしているのだろう。


DEFTONESは基本的にどのアルバムも聴いても名盤という凄いバンドなのだが、中でも今回取り上げている「WHITE PONY」は素晴らしい。


しかし、あまりにも暗すぎるので、気持ちが下を向いている時に聴くのは要注意である。

 

#0398) THE BIG AREA / THEN JERICO 【1989年リリース】

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今回取り上げているTHEN JERICO[ゼン・ジェリコ]は英国のロック・バンドだ。


1987年に1stアルバムの「FIRST (THE SOUND OF MUSIC)」をリリースしているのだが、今回取り上げているのは2ndアルバムの「THE BIG AREA」だ。


このバンドがデビューする時は、日本の洋楽雑誌でもけっこう大きめの取り上げられ方をしており、1stアルバムの「FIRST (THE SOUND OF MUSIC)」も当時リアルタイムで買っているはずなのだが殆ど印象に残っていない。


彼らが1stアルバムをリリースした1987年は、名盤が多いと言われている年であり、GUNS N' ROSESの1stアルバム「APPETITE FOR DESTRUCTION」、WHITESNAKEの7thアルバム「WHITESNAKE」、DEF LEPPARDの4thアルバム「HYSTERIA」、MÖTLEY CRÜEの4thアルバム「GIRLS, GIRLS, GIRLS」、Princeの9thアルバム「SIGN O' THE TIMES」、George Michaelの1stアルバム「FAITH」等、何も調べなくても次々とアルバム名を列挙することができる。


他にも沢山の名盤あるのだが、そんなことをしていると主旨が変わってしまうので、この辺で止めておくが、当時の筆者も上記した名盤を毎日のように聴いていた。


そんな名盤が犇めき合う時期に、THEN JERICOの1stアルバム「FIRST (THE SOUND OF MUSIC)」が入り込む余地は当時の筆者には無かったのである。


そして、2年後の1989年に今回取り上げている2ndアルバムの「THE BIG AREA」がリリースされたのだが、筆者は、このアルバムは女の子の友達から借りて聴いている(女の子の友達とは、筆者のブログに時々登場する同級生の女子のお姉ちゃんだ)。


正直なところ、THEN JERICOの2ndアルバムが聴きたかったというよりも、当時の筆者はその娘が好きだったので、その娘と話しをするネタが欲しくてTHEN JERICOの2ndアルバムを借りたのだが、これが思いの外良かったのである。


今思うと、THEN JERICOは1980年代初期に英国で興ったニュー・ロマンティックの香りを残す最後のバンドだったような気がする。


このアルバムは1989年のリリースなのだが、1989年の洋楽シーンは飽和状態の時期であり、その後、英国ではマッドチェスター~シューゲイザーブリットポップという具合にムーヴメントが変遷していくことになる。


THEN JERICOが活動していた時期はニュー・ロマンティックなんて既に終わっていたのだが、彼らは極めて1980年代的なバンドであり、こういうゴージャスで煌びやかな曲をやるアイドル性の高いバンドは、このバンドを最後に英国から現れなくなったような気がする。

 

#0397) GLOW / REEF 【1997年リリース】

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真偽のほどは定かでは無いが、今回取り上げるREEF[リーフ]というバンドの名前は、あの英国ブルース・ロックの最高峰であるFREE[フリー]のアナグラムだという話を何かの記事で読んだ記憶がある。


英語の場合はREEFのFを先頭に移動させるとFREEとなり、日本語の場合でもリーフのフを先頭に移動させるとフリーになるので面白い。


上述したとおり真偽のほどは定かでは無いのだが、筆者は、なぞなぞ、クイズ、パズル、数独、暗号など、頭を捻らされるものが大好きなので、こういう話を知ると、そのバンドに対して俄然興味が湧いてくる。


REEFは英国のバンドであり、1995年に1stアルバムの「REPLENISH」をリリースしている。


1995年の英国と言えばブリットポップ・ムーヴメントの後半だ。


2021年3月現在における、英語版WikipediaREEFのページを見ると、Genres欄にBritpopと書いてあるのだが、個人的には「えっ、こんなんまでブリットポップなん?」と感じており、実際のところ、このバンドの音楽性はファンキーなブルース・ロックであり、ブリットポップの要素は無いと思っている。


筆者は最もブリットポップらしいバンドはMENSWEAR[メンズウェア]だと思っているのだが、MENSWEARからREEFにはちょっと繋がらない(この記事を書くにあたっての下調べで気付いたのだが、MENSWEARの1stアルバム「NUISANCE」も1995年にリリースされている)。


正直なところ、REEFの1stアルバム「REPLENISH」はそれほど印象に残らないアルバムだった。


Paul Wellerポール・ウェラー]、SOUNDGARDENサウンドガーデン]等、筆者の好きなアーティストの前座を務めたという記事を当時の洋楽雑誌で読んだことによりREEFに興味を持ち、「REPLENISH」を買うに至ったのだが、こういうファンキーな曲をやるにはヴォーカルの線が細くてガツンとくるものが無かったのだ。


それ以降、REEFのことは忘れてしまったのだが、2000年代も後半に入ってから動画サイトで "Place Your Hands"という曲を聴き、「シンガー、変わったんちゃうん?」と思えるくらいヴォーカルが逞しなっており、この曲が収録されている2ndアルバムの「GLOW」を買ったところ、これがもう1stとは比較にならないほどガツンとくる図太くてファンキーなブルース・ロックに変わっていたのだ。


この時代の英国のバンドで、これほど「へなちょこ感」の無いバンドは珍しいのである。

 

#0396) BACK TO BEDLAM / James Blunt 【2004年リリース】

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James Blunt[ジェイムズ・ブラント]の"You're Beautiful"が大ヒットしたのは2005年なので、もう16年も昔のことだ。


2000年以降の西暦の数値を見ると「まだ最近」と思えて仕方がないのだが、2000年に生まれた人は今年で21歳になるので、2005年の出来事というのは「かなりの昔の出来事」なのである。


James Bluntの"You're Beautiful"を初めて聴いたのは地元のラジオ局「エフエム京都」(地元の人はα-STATIONと呼んでいる)を聴いている時だった。


あまりにも美しくて、頭の中がクラクラするほどの衝撃を受けた。


筆者は歌詞には無頓着な洋楽リスナーなのだが、この曲はあまりにも美し過ぎるので歌詞が知りたくなった。


この曲は、「地下鉄で偶然元カノを見かけ、後をつけて行ったところ、元カノは今カレの所に辿り着き、その時、元カノと目があってしまった」というJames Blunt本人の出来事をそのまま歌詞にしているのだが、この歌詞を知って更にこの曲が好きになった。


上述の出来事の後、帰宅したJames Bluntは僅か数分でこの曲を書きあげたそうなのだが、これはもう天才の成せる業としか言いようがない。


そんな天才の書いた"You're Beautiful"をラジオで聴いた筆者は、その後、この曲が収録されている彼の1stアルバム「BACK TO BEDLAM」を買い行ったのだが、たとえ良い曲が"You're Beautiful"だけだったとしても構わないと思っていた。


ところが「BACK TO BEDLAM」は収録曲の全てが名曲という名盤だったのである。


このアルバムは全10曲収録されており、"You're Beautiful"は2曲目なので、後に8曲続くのだが、"You're Beautiful"という名曲が早々に終わってしまっても、その後の8曲も名曲なので全く集中力を失うことなく聴き続けられるのだ。


Ed Sheeranエド・シーラン]を聴いた時にも同じことを感じたのだが、「こういう人は名曲を書くために神に選ばれた人なのかな」と思えてしまうのである。


筆者は、宗教や信仰には無関心であり、科学的根拠の無いものは信じないタイプの人間だ。


実際のところ、神もいないと思っている。


そんな筆者ですら、James Bluntが生み出す多幸感に溢れた名曲の数々を聴いていると、その神々しさにひれ伏してしまい、「神に選ばれた」という言葉を使いたくなるのである。

 

#0395) CLIMBING! / MOUNTAIN 【1970年リリース】

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最近はロックを聴くことが殆ど無くなってきたのだが、先月、「久々にロックらしいロックを聴いてみよう」と思い立ち、選んだ1枚がGRAND FUNK RAILROADグランド・ファンク・レイルロード]の2ndアルバム「GRAND FUNK」だった。


その時に「ロックらしいロック」ということで、もう1枚、思い浮かんだのが今回取り上げているMOUNTAIN[マウンテン]の「CLIMBING!」だ。


MOUNTAINの中心人物であるLeslie West[レスリー・ウェスト](guitars, vocals)は、「MOUNTAIN」というアルバムを1969年にソロ名義でリリースしており、今回取り上げている「CLIMBING!」は1970年にMOUNTAINというバンド名義でリリースしている。


名義だけ見るとMOUNTAINというバンド名義でリリースしたアルバム「CLIMBING!」が正式な1stアルバムなのかもしれないが、ソロ名義でリリースしたアルバム「MOUNTAIN」にはMOUNTAINのもう一人の主役とも言うべきFelix Pappalardi[フェリックス・パパラルディ](bass, vocals)が既に参加しているので、筆者の中での「CLIMBING!」というアルバムの位置づけは、何となくMOUNTAINの2ndアルバムというイメージがある。


このアルバムは久々に聴いたのだが、とにかく非の打ち所がない完全無欠のハード・ロック・アルバムだ。


ハードな曲はとことんハードに、抒情的な曲はどこまでも抒情的に、ブルージーな曲はいぶし銀の光を放つ。


Leslie Westのギターを堪能できるインストゥルメンタルが収録されているのも良い。


とにかく、全ての曲が極端に振り切っていて、分かり易いところが良いのである。


時々、ロック初心者が聴くのに適したアルバムというのを考えることがあるのだが、このアルバムは「ロックって、こういう音楽だよ」と言って聴かせるのに丁度良いアルバムだ。


筆者が1980年代に毎月購入していた洋楽雑誌の「MUSIC LIFE」に「アメリカン・ハード・ロックの源流」のような記事が掲載されていたことがあり、MOUNTAINGRAND FUNK RAILROADMC5[エム・スィー・ファイヴ、THE STOOGES[ザ・ストゥージズ]等と共にその名が列挙されていたのだが、中でもMOUNTAINGRAND FUNK RAILROADは特に大きく取り上げられていたと記憶している。


確かにこの「CLIMBING!」というアルバムを聴いていると、その後のAEROSMITHエアロスミス]、KISS[キッス]、VAN HALENヴァン・ヘイレン]といった偉大なバンド達により隆盛を極めるアメリカン・ハード・ロックの源流がはっきりと感じられるのである。