Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0421) ライブ / 村八分 【1973年リリース】

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今回取り上げている村八分は、筆者が生まれ育った街「京都」で結成された伝説のロックン・ロール・バンドである。


筆者は1969年生れ、村八分の結成も1969年なので、当然のことながら、リアルタイムで体験したバンドではない。


13歳(中1)でロックを聴き始めた筆者は、ロックと言えば洋楽(というか、アメリカ、イギリス、そして少しだけドイツと北欧)だと思っていたのだが、高校で出会ったK君という同級生から様々な日本のロック・バンドを聴かせてもらうようになり、それからは彼がカセットテープに録音してくれた日本のロック・バンドを熱心に聴くようになった。


その中でも筆者が特に好きになったのは、RED WARRIORS[レッド・ウォーリアーズ]、ZIGGY[ジギー]、G.D.FLICKERSジー・ディー・フリッカーズ]、SHADY DOLLS[シェイディ・ドールズ]、MARCHOSIAS VAMP[マルコシアス・バンプ]といった、所謂バッド・ボーイズ・ロックン・ロール・バンドであり(MARCHOSIAS VAMPはちょっと違うかな?)、彼らのルーツを掘り下げていくことで出会ったバンドの一つが村八分だったのである。


当時(1980年代後半)は、リリースされる音楽の記録媒体が、レコードからCDに移り変わっていた時代なのだが、村八分が、その活動期間中(1969年~1973年)に、正式にリリースした唯一のアルバムである「ライブ」も復刻版としてCDでリリースされていた。


当時の筆者は、街中のレコード店をハシゴして、掘り出し物を見つけることを楽しみにしていたのだが、村八分の「ライブ」を見つけた時は驚きと興奮で眩暈がしたものである。


当然、即買いしたわけだが、家に帰って「ライブ」を聴いた時は別な意味で眩暈がした。


全然、良くなかったのである。


この「ライブ」というアルバムは、京都大学西部講堂で行われたライブを録音したライブ・アルバムなのだが、前述した1980年代後半のバッド・ボーイズ・ロックン・ロール・バンドとは、似ても似つかぬ歪な音だったのだ。


村八分というバンドは、THE DYNAMITES[ザ・ダイナマイツ]でメジャー・デビュー経験のある山口冨士夫のギターだけは、ずば抜けて上手いのだが、他のメンバーの技量は、ほぼアマチュアであり、かなり聴きにくく、楽曲にもキャッチーな要素が全くない。


その後、時が流れて2000年代に入り、筆者は騒音寺というバンドを聴くことになる。


騒音寺も、京都で結成され、京都で活動するロックン・ロール・バンドだ。


騒音寺は既にこのブログでも取り上げているのだが、「京都には凄いロックン・ロール・バンドがいる」と自慢したくなるくらい、カッコ良いバンドなのである。


そして、騒音寺の曲が放つ「京都感」に触れた時に、村八分のことを思い出したのである。


「今なら、村八分の良さが分かるかもしれない」と思い、再び「ライブ」を聴き直してみたところ、勝手な話だが、良かったのである。


やはり、山口冨士夫のギター以外は下手なのだが、彼らが奏でる京都っぽい和のテイストを持つロックン・ロールは極めて独創的であり、このテイストは村八分というバンド以外では味わうことの出来ない個性なのである。

 

#0420) AGE OF ZOC/DON'T TRUST TEENAGER / ZOC 【2021年リリース】

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最近、清家咲乃という音楽ライターの書く文章を好んで読んでいる。


切っ掛けは、音楽雑誌BURRN!の2019年10月号だ。


上記のBURRN!は創刊35周年記念の特大号なのだが、その中に『編集部とライターが選ぶ35年間、この100枚』という特集があり、この特集で記事を書いている18人の中で、彼女の文章が最も面白かったのである。


1996年生れで青山学院卒、BURRN!には2019年7月号から2020年2月号まで在籍し、現在はフリーの音楽ライターとして活躍されている人である。


BURRN!を退職した後も、同誌には「TIDE OF SCENE」という記事を連載されていおり、筆者はこの記事が読みたくて毎月BURRN!を買い続けている。


1996年生れということは、筆者からすると、自分の娘よりも若い世代なので、先ず、そこで驚いてしまうのだが、何よりも驚くのは、彼女の音楽との接し方の新しさと、アーティストを紹介する文章の新しさである。


その新しさは、1980年代のファッション界に旋風を巻き起こした、山本耀司三宅一生川久保玲(Comme des Garçons)の登場に近いものを感じると言ったら褒めすぎだろうか?


上記したBURRN!の特集で、彼女が選んでいる100枚のアルバムは、掲載紙に合わせてHR/HM系で揃えているのだが、ヒップホップ、ヴィジュアル系、アイドル等、ジャンルを問わず音楽と接しており、彼女の書く記事を読むと、全く知らないアーティストでも、何となく、そのアーティストの音源を聴きたい気分にさせられる。


今回取り上げているZOC[ゾック]を聴いた切っ掛けも、彼女が書いたZOCの記事をインターネットで読んだからだ。


とにかく、ZOCが聴きたくなり、Amazon Musicで彼女たちのメジャー1stシングル"AGE OF ZOC/DON'T TRUST TEENAGER"を聴いてみた。


筆者は、アイドル・ソングを聴くことが殆ど無いので、何が飛び出すか不安だったのだが、予想を覆すカッコ良さなので驚いている。


その後、YouTubeでミュージック・ビデオを見たのだが、映像が付くとカッコ良さが倍増する。


この商品は、両A面シングルだと思うのだが、"AGE OF ZOC"は途中でラップも入るハイテンションな曲で、ライヴの1曲目にやれば必ず盛り上がる曲であり、"DON'T TRUST TEENAGER"はシニカルなメッセージを含むエモーショナルな曲で、ライヴの後半にぴったりな曲だ。


もう一曲、"family name"という曲も「おまけ」的な感じで入っており、良い曲なのだが、"DON'T TRUST TEENAGER"と雰囲気が被るので、これは無くても良かったような気がしなくもない。


2日前の8月5日に、これらの曲を初めて聴いたのだが、もう、何度も繰り返し、ミュージック・ビデオを見ている。


正直なところ、まだZOCを知って日が浅いので、メンバー一人一人の区別が付かないのだが、メンバー全員が可愛いということにも驚いた。


ちょっと書きにくいのだが、テレビに出ているアイドルを見て、「アイドルって、それほど可愛い人ばかりじゃないんだな」と思っていたのだが、ZOCはメンバー全員が可愛い。


きっと、このグループのオーディションは、かなり厳しいのではないだろうか?

 

#0419) YANQUI U.X.O. / GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR 【2002年リリース】

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明確に「いつからか」ということを憶えているわけではないのだが、筆者は1990年代の中頃からジワジワとロックから離れてしまった。


筆者は1969年生れなのだが、ロックを聴き始めたのは1983年なので、13歳(中1)からロックを聴き始めたことになる。


上記のとおりロックから離れたのは1990年代中頃なので、その年を仮に1995年と仮定した場合、26歳の時にロックから離れたことになる。


今、その頃を振り返って、「何故、ロックから離れたのか」の理由考えてみると、よくあるような「ロックが面白くなくなったから」という訳ではないのである。


言い訳として、「最近のロックは面白くない」と、「いっちょまえ」なことを言っていたが、いつの時代でも、面白いロックは探せばいくらでも出てくるものである。


筆者がロックから離れた理由は、「26歳にもなる大人がロックを聴くなんて恥ずかしい」と考えるようになったからだ。


当時(26歳頃)は、ようやく一人前に仕事ができるようになった頃であり、趣味としてロックを聴くよりも、与えられた業務課題をミスなく遂行することの方が筆者にとっては大切なことになっていたのである。


しかし、ロックから完全に離れたのかと言えば、そうではなく、ロック雑誌をチラ見しながら、「あっ、このバンド、聴いてみたいかも」と思う瞬間は時々あった。


そんな筆者が再びロックに戻ることになった切っ掛けの一つがポストロックの登場である。


もともとインストゥルメンタルが好きだったので、ポストロックは筆者の好みにピタリと嵌ったのである。


TORTOISE[トータス]の「TNT」に嵌ったことがポストロックへの入り口となり、その後は、MOGWAIモグワイ]、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ[Explosions in the Sky]等にド嵌りしていくわけである。


なかでも、とりわけ嵌り倒したのが、カナダはモントリオール出身のGODSPEED YOU! BLACK EMPERORゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー]である。


GODSPEED YOU! BLACK EMPERORのアルバムは、この世の終わりを感じさせるような重さと、来世を予感させる荘厳な雰囲気を持つものが多いのだが、今回取り上げている3rdアルバムの「YANQUI U.X.O.」は殊の外その傾向が顕著な作品だ。


このバンドの曲は大人数で演奏されており、構成が複雑で、正直なところ、1曲の始まりから終わりまでが、どのような編曲になっているのか把握するのが難しい。


曲の後半になる頃には、前半がどのような展開だったか憶えてない場合もある。


そんな、キャッチーとは対極に位置する曲ばかりでありながら、聴いているとグイグイ彼らの世界観に引き込まれるのである。


筆者にとってのGODSPEED YOU! BLACK EMPERORの最高傑作は今回取り上げている3rdアルバムの「YANQUI U.X.O.」だが、初めてGODSPEED YOU! BLACK EMPERORを聴く人には、少しだけキャッチーな2ndアルバムの「LIFT YOUR SKINNY FISTS LIKE ANTENNAS TO HEAVEN」をお薦めしたい。


下記はそのアルバム・カヴァーである。

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#0418) PIGEONHOLE / NEW FAST AUTOMATIC DAFFODILS 【1990年リリース】

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#0408でTHE SOUP DRAGONS[ザ・スープ・ドラゴンズ]を取り上げた時に、「マンチェスター出身ではないのに、マッドチェスターっぽいサウンド」と書いたが、今回取り上げているNEW FAST AUTOMATIC DAFFODILS[ニュー・ファスト・オートマティック・ダフォディルズ](以下、New FADS)は、マッドチェスター・ムーヴメントの頃にデビューしたマンチェスター出身のバンドでありながら、マッドチェスターらしくないサウンドなのである。


そもそも、New FADS知名度は、マッドチェスター御三家であるTHE STONE ROSESザ・ストーン・ローゼズ]、HAPPY MONDAYSハッピー・マンデーズ]、INSPIRAL CARPETS[インスパイラル・カーペッツ]と比べると著しく低いので、そんなバンドを取り上げて「マッドチェスターらしくない」という話を記事にしたところで、何の面白みもないのかもしれない。


それにも関わらず、何故New FADSを取り上げるのかと言うと、ただ単に筆者がこのバンドの1stアルバム「PIGEONHOLE」を気に入っているからだ。


このアルバムで聴けるNew FADSの音楽性は、所謂「ダンスとロックの融合」なので、そこだけに焦点を当てるとマッドチェスターということになるのかもしれないが、このバンドの「ダンスとロックの融合」は、他のマッドチェスター系のバンドとは根っこの部分が違っているように思えてならない。


マッドチェスターというと、バギーパンツを履いてマラカスを振って踊り狂うという、享楽的なイメージがあるのだが、New FADSの音楽性には享楽的なイメージが無い。


マッドチェスター系バンドの曲はしなやかなリズムを持つものが多いのだが、New FADSが刻むリズムは非常に硬質であり、享楽的に踊り狂えるものではないである。


多くのマッドチェスター系バンドのレコードは、ドラムスを構成する打楽器の音をあえてボヤっとさせて録音していることが多いのだが、New FADSはドラムス構成する打楽器の音をかなりカッチリと録音している印象を受ける。


そして、New FADSの曲のリズムは、ドラムスよりもパーカッションの方が目立つことが多い。


正直なところ、筆者は上記したような典型的なマッドチェスター風の享楽的なリズムが少し苦手だ。


今でも時々聴く、マッドチェスター系のバンドは、THE STONE ROSES、THE SOUP DRAGONS、そして、New FADSであり、何故この3つのバンドを聴くのかと考えてみたのだが、やはり、単純に曲がカッコ良いからに他ならないのである。

 

#0417) BLUES FOR THE RED SUN / KYUSS 【1992年リリース】

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QUEENS OF THE STONE AGEクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ](以下QOTSA)のJosh Hommeジョシュ・オム]が、QOTSAを結成する前に在籍していたバンドが今回取り上げているKYUSS[カイアス]である。


いきなり話が横道に逸れるが、Josh Hommeの姓であるHommeのカタカナ表記は、ずっと「オム」だったのだが、いつの頃からか「ホーミ」とも表記されるようになり、現状では「オム」と「ホーミ」が併用されている。


これは、John McGeochがジョン・マクガフからジョン・マッギオークに変わったり、THE SUPREMESがザ・シュープリームスからザ・スプリームス変わったりという具合に、より英語の発音に近づけた結果なのだと思う。


今回取り上げているKYUSS[カイアス]は、米国のカリフォルニア州パームデザート出身のバンドであり、1991年から1995年の間に4枚のアルバムをリリースしている。


1991年から1995年というと、筆者の興味の対象がロックから、ドラムン・ベースやテクノに移っていた時期なので、実のところKYUSSの記憶は全く無い。


2000年代に入ってからQOTSAを聴き、そこから遡ってKYUSSを知ったのである。


KYUSSの音楽性はストーナー・ロック/ストーナー・メタルであり、所謂BLACK SABBATHブラック・サバス]を始祖に持つドゥーム・メタルに近い音楽だ。


筆者はKYUSSを聴く時にQOTSAのようなロックン・ロールっぽいテイストを持つストーナー・ロックを期待して2ndアルバムの「BLUES FOR THE RED SUN」を聴いたのだが、KYUSSの音楽性はQOTSAとかなり違っていた。


QOTSAと比べると、KYUSSの曲はヴォーカルよりもリフが主役であり、異常なほど低音が強調された録音なので、はっきり言って、かなり取っ付きにくい。


しかし、ストーナー・ロックという音楽は、聴きにくいのに何故か聴いてしまうという、中毒性の高い音楽なのである。


最近知ったのだが、KYUSSは、CORROSION OF CONFORMITY[コロージョン・オブ・コンフォーミティ]、MONSTER MAGNET[モンスター・マグネット]、SLEEP[スリープ]と共に、ストーナーBIG 4と呼ばれているらしい。


このブログではCORROSION OF CONFORMITYは既に取り上げているので、いずれ機会があればMONSTER MAGNETとSLEEPも取り上げてみようと思う。