明確に「いつからか」ということを憶えているわけではないのだが、筆者は1990年代の中頃からジワジワとロックから離れてしまった。
筆者は1969年生れなのだが、ロックを聴き始めたのは1983年なので、13歳(中1)からロックを聴き始めたことになる。
上記のとおりロックから離れたのは1990年代中頃なので、その年を仮に1995年と仮定した場合、26歳の時にロックから離れたことになる。
今、その頃を振り返って、「何故、ロックから離れたのか」の理由考えてみると、よくあるような「ロックが面白くなくなったから」という訳ではないのである。
言い訳として、「最近のロックは面白くない」と、「いっちょまえ」なことを言っていたが、いつの時代でも、面白いロックは探せばいくらでも出てくるものである。
筆者がロックから離れた理由は、「26歳にもなる大人がロックを聴くなんて恥ずかしい」と考えるようになったからだ。
当時(26歳頃)は、ようやく一人前に仕事ができるようになった頃であり、趣味としてロックを聴くよりも、与えられた業務課題をミスなく遂行することの方が筆者にとっては大切なことになっていたのである。
しかし、ロックから完全に離れたのかと言えば、そうではなく、ロック雑誌をチラ見しながら、「あっ、このバンド、聴いてみたいかも」と思う瞬間は時々あった。
そんな筆者が再びロックに戻ることになった切っ掛けの一つがポストロックの登場である。
もともとインストゥルメンタルが好きだったので、ポストロックは筆者の好みにピタリと嵌ったのである。
TORTOISE[トータス]の「TNT」に嵌ったことがポストロックへの入り口となり、その後は、MOGWAI[モグワイ]、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ[Explosions in the Sky]等にド嵌りしていくわけである。
なかでも、とりわけ嵌り倒したのが、カナダはモントリオール出身のGODSPEED YOU! BLACK EMPEROR[ゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー]である。
GODSPEED YOU! BLACK EMPERORのアルバムは、この世の終わりを感じさせるような重さと、来世を予感させる荘厳な雰囲気を持つものが多いのだが、今回取り上げている3rdアルバムの「YANQUI U.X.O.」は殊の外その傾向が顕著な作品だ。
このバンドの曲は大人数で演奏されており、構成が複雑で、正直なところ、1曲の始まりから終わりまでが、どのような編曲になっているのか把握するのが難しい。
曲の後半になる頃には、前半がどのような展開だったか憶えてない場合もある。
そんな、キャッチーとは対極に位置する曲ばかりでありながら、聴いているとグイグイ彼らの世界観に引き込まれるのである。
筆者にとってのGODSPEED YOU! BLACK EMPERORの最高傑作は今回取り上げている3rdアルバムの「YANQUI U.X.O.」だが、初めてGODSPEED YOU! BLACK EMPERORを聴く人には、少しだけキャッチーな2ndアルバムの「LIFT YOUR SKINNY FISTS LIKE ANTENNAS TO HEAVEN」をお薦めしたい。
下記はそのアルバム・カヴァーである。