米国のバンドでありながら、米国式綴りのColorではなく英国式綴りのColourを使っているのは何故なのだろうか。
LIVING COLOUR〔リヴィング・カラー〕がロック・シーン登場した時に最も気になったのがそこだった。
その理由は結局のところ今でも判らない。
黒人ロックバンドで一番好きなのはFISHBONE〔フィッシュボーン〕なのだが(というか、黒人に限定せずとも筆者にとってFISHBONEは全てのロックバンドの中でもかなり上位に入るバンドだ)、ロック・シーンに与えた衝撃度ではLIVING COLOURの方が遥かに上であったことは認めざるを得ない。
LIVING COLOURが今回取り上げた1stアルバム「VIVID」をリリースしたのは1988年である。
その前年の1987年にはGUNS N' ROSESが1stアルバム「APPETITE FOR DESTRUCTION」をリリースしており、当時の米国のロック・シーンはハード・ロック/ヘヴィ・メタルのバブルが最高潮に盛り上がっていた時期だったと言える。
そんな中で黒人流に解釈した独創的なハード・ロック/ヘヴィ・メタルでシーンに風穴を開けたのがLIVING COLOURの「VIVID」だった。
LIVING COLOUR以前にもFISHBONEやBAD BRAINS〔バッド・ブレインズ〕等、黒人ロックバンドは既に存在していたが、LIVING COLOURは他の黒人ロックバンドと比べると圧倒的にキャッチーで解りやすかった。
FISHBONEは曲によってはかなりダンサブルであり、BAD BRAINSも曲によってはハードコアすぎるので、保守的なロック・リスナーまで巻き込むのは難しかった。
しかしLIVING COLOURは黒人らしいファンキーな要素も多分にあったが、その音楽性のベースにはハード・ロック/ヘヴィ・メタルがあり、「黒いLED ZEPPELIN〔レッド・ツェッペリン〕」という評価もなるほど言い得て妙だと感じた。
"Cult Of Personality"なんて、間違いなくライヴで一緒に大合唱したくなるようなキャッチーなメロディを備えたロック・アンセムだ。
ここまでの文章で便宜上「黒人ロックバンド」と書いてきたが、筆者はこの呼び方が実はあまり好きではない。
何故なら、ロックとは、或いは、ロックン・ロールとはChuck Berry〔チャック・ベリー〕やLittle Richard〔リトル・リチャード〕等、黒人によって産み出された音楽だからである。