1990年代中期に英国で興ったブリットポップ・ムーヴメントからは実に様々なアーティストが登場した。
筆者も当時の洋楽雑誌に煽られて、出てくるアーティストのCDを片っ端から買っていた。
ただ、正直なところ、「これは買って失敗したな」と思うCDも少なくなかった。
当時はインターネットで簡単に試聴できるような環境が無かったので、洋楽雑誌の情報を鵜呑みにして買っていたのだが、洋楽雑誌はレコード会社の太鼓持ちのような側面もあるので、次から次へと登場する新人アーティストに対し、実際の実力以上の評価を与えることもあった。
つまり、筆者はムーヴメントに便乗しようとするレコード会社の青田買いと、それをプッシュする洋楽雑誌の連携プレイにまんまと嵌っていたわけだが、稀に「これは生涯聴きつけるだろう」と思える珠玉の名盤にめぐり逢うこともあった。
今回取り上げたGENE〔ジーン〕の1stアルバム「OLYMPIAN」もそんな一枚だ。
THE SMITHS〔ザ・スミス〕との比較で語られることも多く、口の悪い英国プレスからはカムデン・スミスと揶揄されることもあったバンドだが、実際に聴いてみると彼らの影響源がTHE SMITHSだけではないことが分かる。
GENE の曲にはTHE SMITHSほど尖ったところはなく、しなやかで、そして、温もりを感じさせてくれる彼らのメロディはTHE SMITHSというよりも後期のTHE JAM〔ザ・ジャム〕からの影響が濃い。
こう書くと、「結局はTHE SMITHSとTHE JAMのパクリか」と言われそうだが、GENEに限らず、この時期の英国のバンドでTHE SMITHSとTHE JAMからの影響を受けていないバンドを探す方がむしろ難しいのではないだろうか。
ここまでGENEの音楽的影響源について根拠が有るのか無いのか分からないことを書いてきたが、筆者がこのバンド、そして、このアルバムを好きな理由はそこではない。
では、どこが好きなのかと言うと、彼らが放つロマンティシズムなのである。
これは、以前、取り上げたMARION〔マリオン〕やMANSUN〔マンサン〕にも通ずることなのだが、このロマンティシズムというものは練習して出せるようになるものではない。
ロマンティシズムとは、そのアーティストが持って生まれた資質なのである。