Robert Palmer〔ロバート・パーマー〕は1972年にVINEGAR JOE〔ヴィネガー・ジョー〕のシンガーとしてデビューし、VINEGAR JOE解散後は1974年に1stアルバム「SNEAKIN' SALLY THROUGH THE ALLEY」をリリースしてソロ・シンガーとしてのキャリアを開始した。
母国である英国ではソウルフルなヴォーカルが高い評価を得ており、日本でもFrankie Miller〔フランキー・ミラー〕、Jess Roden〔ジェス・ローデン〕と合わせて「英国ブルー・アイド・ソウル御三家」と言われていたそうだが、1980年代初期から洋楽を聴き始めた筆者がRobert Palmerのことを初めて知ったのはTHE POWER STATION〔ザ・パワー・ステーション〕のシンガーとして登場した時だ。
THE POWER STATIONとは、当時人気絶頂だった英国のバンドDURAN DURAN〔デュラン・デュラン〕のJohn Taylor〔ジョン・テイラー〕(bass)とAndy Taylor〔アンディ・テイラー〕(guitar)が、CHIC〔シック〕のTony Thompson〔トニー・トンプソン〕と、今日の主役であるRobert Palmer(vocals)と共に結成した所謂スーパー・バンドである。
当時の筆者はDURAN DURANのファンではあったが、サイド・プロジェクトというのは成功したミュージシャンのお遊びだと思っていたのでTHE POWER STATIONに特別な期待を寄せていなかった。
ところが、テレビで見たTHE POWER STATIONの1stシングル"Some Like It Hot"があまりにもカッコ良いダンス・ロックだったので、アルバム「THE POWER STATION」にも即座に飛びついたのである。
とにかく目を引いたのがDURAN DURANの二人ではなく、シンガーであるRobert Palmerのソウルフルな歌声や堂々たるパフォーマンスだった。
そして、THE POWER STATIONでの強烈なインパクトが醒めない絶妙のタイミングでリリースされたのが今回取り上げたRobert Palmerの8thアルバム「RIPTIDE」なのである。
この「RIPTIDE」というアルバムは、THE POWER STATIONにも通じるファンキーなダンス・ロックであり、初めからアルバム「THE POWER STATION」との二本立てとして制作したのではないかと思えるほど作風が似ている。
同じく1980年代に人気を博した英国出身のダンディなソロ・シンガーとしてはDavid Bowie〔デヴィッド・ボウイ〕やBryan Ferry〔ブライアン・フェリー〕がいるが、Robert Palmerがその二人と決定的に異なるのは腹から声を出せる歌の上手いシンガーだということだ。
ちなみに、Robert Palmerはこのアルバム「RIPTIDE」の制作のためにTHE POWER STATIONのツアーには参加しなかったので、当時の筆者は「それはちょっとズルいんちゃうん?」とも思っていた。