筆者が中学生の頃、「ROCK IN JAPAN 1985」というライヴが横浜スタジアムで開催された。
これは小規模なロック・フェスティヴァルのようなもので、出演アーティストはヘッドライナーから順にCULTURE CLUB〔カルチャー・クラブ〕、THE STYLE COUNCIL〔ザ・スタイル・カウンシル〕、GO WEST〔ゴー・ウエスト〕、THE ASSOCIATES〔ジ・アソシエイツ〕というラインナップだ。
当時の筆者はCULTURE CLUBとTHE STYLE COUNCILが大好きで、GO WESTは洋楽雑誌がプッシュしていた期待の新人デュオだったので、このライヴを観に行きたかったのだが、中学生だった筆者にとって、地元の京都から横浜まではあまりにも遠すぎるため、結局観に行くことは叶わなかった。
それにしても、このラインナップの中で気になったのはTHE ASSOCIATESだ。
このラインナップを見た時、THE ASSOCIATESだけは「誰?」とうのが偽らざる感想だった。
そして、このライヴが終わり、少し経ってから洋楽雑誌にライヴ評が載ったのだが、CULTURE CLUBとTHE STYLE COUNCILは掲載されている写真も多く好意的な文章が書かれており、GO WESTにもそこそこの写真と良い感じの文章があった。
しかし、THE ASSOCIATESだけは写真も小さく、文章も正確には憶えていないが「アソシエイツも頑張った」という感じの雑な扱いを受けており、知らないアーティストではあるが、何とも言えない悲しい気分になった記憶がある。
それ以来、THE ASSOCIATESのことは忘れていたのだが、その後かなりの時間が経過して、このアーティストのことを思い出したのは今回取り上げている2ndアルバムの「SULK」が洋楽雑誌で大絶賛されている記事を読んだ時だ。
数年前、無性にこのアルバムが聴いてみたくなり、「SULK」(のデラックス盤)を購入して聴いたのだが、あらゆるパーツを完璧に組み上げた作品としての構築美に鳥肌が立った。
高音域を自在に操って歌うBilly Mackenzie〔ビリー・マッケンジー〕と、マルチ・インストゥルメンタリストのAlan Rankine〔アラン・ランキン〕が構築する楽曲の融合は、この時代のシンセポップの中では飛び抜けて個性的だ。
無理やり近いと思うアーティストを挙げるならSOFT CELL〔ソフト・セル〕なのかもしれないが、THE ASSOCIATESにはSOFT CELLのような良い意味での下世話なキャバレー的な感触は無い。
残念なことにBilly Mackenzieは1997年に自ら命を絶ってしまうのだが、これはポップ・ミュージックにとってあまりにも大きな損失だった。