1970年代は名盤の宝庫だ。
特に1970年代の中期には手に負えない名盤が固まっているいるような気がする。
今パッと思いついた名盤を米国に限って列挙してみても、Bruce Springsteen[ブルース・スプリングスティーン]の「BORN TO RUN」、AEROSMITH[エアロスミス]の「ROCKS」、Stevie Wonder[スティーヴィー・ワンダー]の「SONGS IN THE KEY OF LIFE」、EAGLESの[イーグルス]の「HOTEL CALIFORNIA」等、永遠に色あせることの無い名盤のタイトルを次から次へ書くことが出来る。
筆者は1980年代初期から洋楽を聴き始めた人間なので1970年代の洋楽は完全に後追いである。
そんな筆者にとって、当時の洋楽雑誌に時々掲載されていた「1970年代の名盤特集」的な記事を読み、それらのアルバムをレコード店に探しに行く時は、まるで宝島に探検に行くかのような高揚感を覚えたものである。
今回取り上げているGeorge Clinton[ジョージ・クリントン]率いるFUNKADELIC[ファンカデリック]の9thアルバム「HARDCORE JOLLIES」もそんな名盤の一つだと言えるだろう。
筆者がGeorge Clintonに興味を持った切っ掛けはPrince[プリンス]だ。
1980年代中期の筆者はPrinceに狂っていたので、彼の音楽的影響源の一つとして時々名が挙がるP-Funk[Pファンク](Parliament-Funkadelic[パーラメント・ファンカデリック])という言葉を知り、その総帥であるGeorge Clintonに辿り着いた。
P-Funkという言葉が、George Clintonが率いるPARLIAMENTとFUNKADELICという二つのプロジェクトを合わせた呼び方であることは、だいぶ後になってから知った。
今回取り上げているFUNKADELICの「HARDCORE JOLLIES」は、ファンク・バンドでドラマーをやっていた10歳くらい年上のお兄さんから借りたのだが、とにかく、このアルバムを聴いた時の衝撃はちょっと言葉で表すのが難しい。
このアルバムから聴こえてくる濃厚で、それでいて、切れのある曲を聴いた時、George ClintonがPrinceに与えた影響がクッキリと見えたのだ。
当時の筆者はPrinceの音楽は唯一無二のものだと思い込んでいたのだが、Princeのような天才ですら何らかの影響を他人から受けていることに衝撃を受けたのである。
そして、そんな天才Princeに影響を与えてしまう、これもまた天才George Clintonというミュージシャンに対し、畏怖の念を覚えたのである。